深江50周年記念号

 神戸商船大学ヨット部OB会誌「深江2003号 OB会50周年特集」号、その一部の記事を掲載致します。

 この号は50周年記念号であるとともに、神戸商船大学ヨット部OB会誌としての最終号になって、この後少し時間をおいてですが、神大ヨット部OB会と神船大ヨット部OB会は統合されて一体になりました。

1. 表紙

2.巻頭の柴田康彦会長のごあいさつ文

「ご 挨 拶」

神戸商船大学ヨット部OB会

会長 柴 田 康 彦

 世界的に天候不順に見舞われていますが、皆様、如何

お過ごしでしょうか。

 ご存知の様に神戸商船大学と神戸大学の統合により

50年の歴史を持つ我がヨット部OB会は閉じることと

なりました。

 若い後輩の諸君の気持ちを推し量ることは難しいですが

私のような年配者にとりましては、このことは誠に淋しいことです。

 私たち、OB会は基金を設立し何らかの形で現役諸君の

活動を支援したいと願い活動してきました。

 ところが「運動部」に対する時代の流れもありましょうが、

ある時期より現実には部員の減少が続き、今夏のインカレには

残念ながら2艇が出艇出来るのみとなりました。

 しかしながら、残念なことばかりではありません。

私が知っているだけでも、私達ヨット部OBには栗原さん、

武田さんのように30数年も前にヨットで世界を渡った仲間、

愛艇を操って海を自由の遊び場としている仲間、まだまだ

現役で活躍したり学達でボランティア活動をしている仲間、

ずっと後輩の面倒をみてくれていた仲間、そしてこの仲間は

統合後も神戸大学との絆を深めるために関わっていきたいと

言ってくれています。

蔭山さん、木村さんの様に母校の「海と船に親しむ」講座の

手伝いをしておられる仲間、蔭山さんは又、これからのヨットを

愛する若い人を育て、あるいはヨットを使って若い人の教育にと

心血を注いでおられます。

 此処に述べました以外にも色々と活動しておられるでしょうが、

こうして、組織としてではなく個人として、かってヨット部で

培われたヨットマン・スピリットを開花させておられるOBを

輩出しているのです。

若しかしたら、全てのOBにこのョットマン・スピリットは

表現の形は変えていても生き続けているのではないでしょうか。

 神戸商船大学ヨット部 OB会誌「深江」最終号にあたり、

そのような願いを託し「ごきげんよう!!」のご挨拶を送ります。

長い間のご協力を有難うございました。

3.ヨット部顧問、松木哲名誉教授のご寄稿

長文ですが今のOB会のありかたを8年前に予想しておられ、

ぜひ一読を頂きたいと思っております。

「ヨット部OB会の将来」

神戸大学海事科学部名誉教授

神大ヨット部顧問 松木 哲

 2003年10月1日に神戸商船大学は神戸大学と統合し、

神戸大学海洋科学部と看板を書き換えた。 1952年に

新制大学として設立された神戸商船大学が学生を迎え入れて

から51年余りであった。神戸商船大ヨット部はキャンパス内に

ポンドや艇庫があるという、他の大学では考えられない好条件に

恵まれた環境で発足し、その後の埋め立てによって、狭苦しかった

ポンドは数倍に広がり、爆撃で穴だらけの昭和丸を利用した艇庫は、

鉄筋コンクリートの立派な建物に変わった。そのかわり大学の沖合に

埋立地ができたため練習海面まで出て行くのに時間がかかり不便には

なったものの、やはり他大学に比べれば恵まれた環境であった。

ただし、教室を横目に講義をサボってポンドに行くのに、多少は気が

とがめた人達がいたかも知れない。

 神戸大学はすでに新西宮ヨットハーバーに艇庫をもっているから、

統合後も商船大学のポンドを使用せず西宮で練習するとのことで、

キャンパスと艇庫が離れているため往復に時間がかかる不便さはあるが、

西宮には伝統のある大学ヨット部の艇庫が並んでおり、商船大のように

孤立して練習するよりは練習効果が高まることは間違いない。

また規模の小さい商船大学が多数の運動部をもっているため、各部とも

部員の確保には頭を悩ませているようで、この部員不足の傾向は規模の

大きい大学でも同じとは聞いているが、統合すれば商船大学ヨット部ほど

部員獲得に苦労しないですむだろう。

 統合後の現役の事はさておきヨット部OBの方はどうか。初期の

商船大学はN(航海科)E(機関科)の2学科だけで、その全員が

寮で生活をし練習船にも乗っていたから、他大学の運動部員のように

練習が終わればそれぞれの家に帰るのとは違って、年中合宿練習して

いるような生活を送っていた。それだけに各運動部のOBの結束は

他大学よりも堅くなるが、余りに生活が密着し過ぎると反発も強く

なることもあったかも知れない。

それも歳を取ると若い時代の全てを懐かしく感じるようになる傾向が

あり、年齢が高くなるにつれて同窓会への出席者が多くなるようである。

 それはともかく、商船大学は学生数が少なくしかも生活を共にして

いたから、学科は違っても相手の事情はよく分かっていて、ロープや

ペイントを技業室からもらってくるのはN、燃料油を深江丸からもらって

くるのはEといった分担はあったとしても、ヨット部の中では学科の違いを

意識することは少なかった。この傾向は学科が増えて練習船には乗らない

学科ができても、また全員が寮外通学の学生が多くなった現在でも、

本質的には変わっていないはずである。運動部は一つの種目に打ち込む仲間と

いう意識で結び付いているのであって、それ以外の事は余り意識していない

のが普通である。

 さて統合後の神戸大学ョット部は複数の学部の学生が所属するから、

部員は学科はもちろん、学部の差も余り意識していないはずである。

意識するとすれば、無事卒業するためにはどうしても練習に参加できない

曜日や時期が、学部や学科によって複雑に入り組んで来て、練習計画を

組むのに苦労する時くらいだろう。商船大学ヨット部OBが、商船大が

名を変えた海事科学部の学生だけを後輩と考えたとしても、これからの

神戸大学ヨット部に入った学生には、一緒に練習している仲間の中から

特定の学部所属の部員だけを分けて扱うような考えは理解できないだろう。

現在のOBが現役部員の中からある学科の学生だけを特別視する場合を

想像すればよい。統合後の海事科学部学生の神戸大ヨット部員には商船大

ヨット部の後継者という意識はないに違いない。

 複数の学部のある大学の運動部に所属したOBにとって、全く違った

系統の学部の学生と一緒にスポーツに打ち込んだ実績は、特に中年に

なるとなかなか利用価値があるようで仲間に弁護士や医者がいて無料相談

にのってくれるし、仕事の上でも自分の専門外の知識を気軽に聞けて

便利だという。

総合大学の運動部のOBにはそれなりの良い点もあるようだが、現役でも

違った専門の学部学科の学生と付き合うのは良い影響があるだろう。

 統合後も現在の艇庫を使用して深江沖で練習するのならともかく、

西宮でしかもなじみのない神戸大の学生たちが練習しているところへ

出掛けて声を掛けるのは億劫だという気分になるのは、商船大ヨット部

OBとしてはやむを得ない。

 運動部OB会の活動には二つの面があり、一つは同じスポーツに励む

後輩を指導し後援すること、も一つは学生時代共に練習に励んだ仲間の

親睦を深めること、早い話が昔話を楽しむことである。

後者の機能を重視すれば、商船大ポンドから離れたしかも全く関係のない

学部の部員では後輩と話が合わないから、神戸大ヨット部のOB会に

統合しても仕方がないと思う人があるのは当然だろう。ただし前者の

後輩への後援の中には好成績をおさめた試合のあと、ご苦労だった、

一杯飲めとおごる代わりこ、先輩先輩とちやほやされる楽しみがなくなる

ことを覚悟しなければなるまい。また既こ相当な年配こなっているOBに

は関係ないが、若いOBにとっては後輩がいなくなって次第に仲間が

少なくなって行く寂しさを味わうことになる。

 一方統合した神戸大ヨット部OB会に参加した人は、若い現役連中との

付き合いや先輩とたてまつられることはこれまでと変わらないが、

昔話を楽しむ方は必ずしも話が合わないことがあるマイナスを覚悟する

必要がある。

要するにOB会の二つの活動を今までどうりに続けようとすれば、

統合した神戸大OB会と新しく結成する商船大OB会の両方に加入

すべきであり、どちらかだけを選択すれば二つの活動のどちらかは

余り期待できなくなるだろう。その選択は各人の考え方や経歴、

それにおおげさな言い方をすれば生活信条あるいは哲学のような

ものに基づき、その選択の結果どうなるかを勘案して決めればよいこと

であり、その選択に対して他人があれこれ言うべきではあるまい。

 大学運動部のOB会は縦のつながりの強い会、つまり指導後援を

受けた先輩後輩の関係で集まった会である。しかし大学時代に同じ

種目のスポーツをしていたOBにはも一つの交流が見受けられる。

こちらはOB会の縦に対して横のつながり、同年配のインカレなど

のレースで争った相手との交流である。たとえば二次大戦後活動を

開始したころのヨット部OBは、今や大部分が仕事から引退し、

しかも当時はヨット部のあった大学が少なかったためか、近年交流が

盛んになっているようで、ヨット部の老OBが数年前から毎年、今の

学生には全くなじみのないA級ディンギーのレースを楽しんでいる。

もっともレースよりはその後の舌戦の方に熱が入っているとの噂も

あるが。商船大ヨット部OBにも仕事から引退した人が多くなり

始めたから、昔レースで競った相手と今度は口先でのレースを戦わすのも

楽しいのではないだろうか。

同年配の他大学OBとの交流にも目を向けてよいように思っている。

 レース相手との交流だけでなく、OBとして後輩のレースの世話を

した学達などの役員を務めた人達も同じく親密な関係になるようで、

やがてその中からヨット関係団体の世話をまかされるようになる人も

出てくる。現役の練習はともかく、インカレともなれば相当な数の

スタッフが走り回らなければ運営できない。

大学ヨット部が練習しその成果をレースで競うためには、各大学

ヨット部OBから仕事を引き受けている人達の努力が欠かせない。

OBとしてこのような仕事を分担するのは、現役時代に世話になった

お返しの一つであり、役員として活躍するOBの姿は後輩に対して

良い影響を与えるはずである。若いOBの積極的な参加を期待したい。

 以上長らく商船大ヨット部にかかわってきたがOBではない立場から、

大学が統合した後の変化について考えていることの一端を書いて見たが、

OBの立場からは見当外れと思うところがあるかも知れない。

ただ小生としては、51年間深江でヨットに乗って来たOBの皆さんが、

今までの絆を一層強くすると共に、大学の看板が変わっても後輩たちを

暖かく見守って欲しいと願っている。

神戸大学ヨット部OB会

神戸大学と旧神戸商船大学のヨット部OB会ホームページ